2008/12/07

岡本太郎のピカソ

青春ピカソ (新潮文庫)

岡本 太郎 / 新潮社



ピカソ来日というのと、かねてから岡本太郎の文章を読みたいと思っていたので、
古本屋で見つけてほくほく。

尾形光琳の論文が岡本太郎の文に興味をもつきっかけだったのだけれど、
この本の中にも太郎節がぞんぶんにあふれていた。

なかでもいいと思ったのは、外来語(岡本太郎の場合はフラ語が主だけど)を
文中に用いる時、その言葉の発音に最も近い表記、
あるいは太郎発音をそのまま言語化した表記がぐいぐいと挿入されていること。
たったこれだけのことなのに、外来語が日本語の中で生きてくる不思議。
この文を読みながら、岡本太郎のおそらくは日本的アクサンのフランス語すらも
聞こえてくるところに口語表記の力強さがあるように感じる。
そうした自由な日本語への収斂はとてもいいものだと考えを新たにした。

岡本太郎がどのような人だったか、残念ながら僕はまだよく知らないのだが、
その文章からにじみ出る決意の強さというか、意志の揺るがなさは、
よく言われるように魂の芸術家としての岡本太郎像と充分に重なる物だった。

ピカソをヴァロリスに訪ねる話が一番面白い。
こうした紀行文の香りのする邂逅のストーリーをフィクションでつくれたら、
そんなに素晴らしいものはないと思わせるものだった。
ピカソと相対する岡本太郎の緊張感がぴりぴり伝わってくるし、
やはり今なおどこかにこの怪物画家に畏怖を覚える岡本太郎の心の震えもちゃんと文章にのって表れているその素直さがいい。

結果として岡本太郎のものと同時にピカソの生涯にも興味を覚えたのだった。
以前読んだ「ピカソ 剽窃の論理」に紹介されていた
Antonina Vallentinの「Picasso」はぜひ手に入れて読んでみたい。

ピカソ 剽窃の論理 (ちくま学芸文庫)

高階 秀爾 / 筑摩書房




あと高階秀爾氏の「世紀末芸術」も今読んでみたい本。

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